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腐女子が萌えているブログです。
同人誌発行情報、雑談など。
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【webイベント記念小話です。雪大】 「未来図」 ……21世紀になっても、ジャズマンの朝は大抵、いつも遅い。 「午前中に起きるとか、ひさしぶり過ぎる……」 眠い目をこすりながら、なんとかゆるゆる身を起こして、ここ数年で悪くなった視力を補うためにオレ、沢辺雪祈はベッドサイドに置いたセルフレームのメガネを掛けた。 ――ここはニューヨーク、ブルックリンのフラット。オレたちは数年前、下層のフラットから日差しのよく当たる高層のこの部屋に引っ越していた。寝室を出てキッチンに向かい、パンにバターを塗ってトースターのスイッチを入れる。まだ眠気を引きずったオレは立ち上がりながらそのオレンジ色の温かな光をぼんやりと見つめる。ジィ……という音と共に、ゆっくりパンの焼ける匂いがした。 NYの明治屋で買ったりんごジャムを塗って、甘い匂いのするトーストとコーヒーをもぐもぐと食べてからオレはリビングに、これから西に旅立つパートナー・宮本大の姿を探しに行った。 「おっ、ユキ。朝起きれたのか。偉いべ!」 別に、まだ寝てたって良かったのに、ユキは。テナーも入るサイズの特注のトランクを閉めながら、ダイは寝起きのオレを見てニッと両方の口端を上げた。 「いつもなら普通に寝てたけど、今回はアレだ、アレ」 オレはメガネのブリッジを中指でクイッ、と持ち上げた。 今日はダイが演奏旅行に出かける日だ。十代でソーブルーに立ってから十数年経った今では世界でも屈指のテナー奏者になり、事務所や専属のマネージャーが付いている現在でも「スマホもあるし、ひとりでサッと行くほうが気楽だべ?」と世界中のジャズクラブを股にかける男だった。 「……今回のツアーは、オレも一緒に行けたら良かったんだが。悪いな」 オレはあれから、左手メインのピアニストとして演奏を続けながら作曲家をしている。ジャズマンとしての腕よりも、どちらかというと作曲家としての注文の方が多くなっていて、今は著名な映画シリーズの新作の曲を書いていた。そいつの締切がギリギリでかなり煮詰まっていたので、ダイの演奏旅行に一緒に付いていく予定を取り止めたのだった。 「行き先、日本だもんな。オレたちの故郷」 札幌から福岡までを縦断する、7箇所・二週間にわたるダイ・ミヤモトのクラブツアー。そのついでに本来はオレたちの実家の仙台と松本にも寄る予定だった。 「ソ―ブルー東京で玉田のやつに会ったら、よろしく伝えておいてくれよ」 「……ユキの作曲の原稿が遅れてる。ってことをか?」 ダイはおどけたように返した。 「ちげーよ、バカ。」 オレはダイの脚を悪戯っぽくドスッと軽く蹴った。 オレたちの家のリビングの隅には、小さなフィギュアや人形がたくさん並んでいる。中心には長野県が誇るゆるキャラ、赤いリンゴの被り物をした緑色のクマがいた。渡米の時にオレが実家からなんとなく持ってきたそのクマを、一匹で部屋の隅に飾っていたものに加えて、いままでの演奏旅行先のあちこちでダイが買ってきたもので。いまやフィギュアの集団は、部屋の隅でちょっとした小さな村みたくなっていた。 土産なんて嵩張るから要らないぞ。と文句を言うオレに 「でも、このクマ……アルクマって言うんだっけ……も、独りぼっちじゃ寂しいべ?」 と、ダイは毎回旅行先から新しい友だちを連れ帰ってくるのだった。 「それじゃ、行ってくるべ。留守番、お願いな」 「気をつけて行ってこいよ。アキコさんや平さんにもよろしく」 オレはダイとハグすると、頬にお守り代わりのキスを落とした。 「次に日本に行くときは、今度こそ一緒に行こうぜ」という約束をしながら。 【終】 *** ………雪祈と大のこういう未来が見たいんですよー!! という文章でした。短くてすみません; このSSとなんとなくつながっている らしい 新刊『アルカディア』もよろしくお願いします。 七篠 PR | カテゴリー
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